戸崎事務所便り令和2年2月号

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今月の言葉

「本当に必要なものなら 必ず事業化できる」

岩谷産業創業者 岩谷直治

今月号の記事から

  1. 2020年は「未払い残業代対策」が課題の年?
  2. 「平成30年若年者雇用実態調査」にみる若者の転職意識
  3. 利用者急増!“退職代行”サービス

①2020年は「未払い残業代対策」が課題の年?

◆セブン‐イレブン・ジャパンで未払い残業代問題

昨年12月、セブン‐イレブン・ジャパンは、パート・アルバイトの残業代が一部未払いとなっていた件で、永松社長が記者会見で謝罪しました。同社の支払不足額は2012年3月以降分だけで4.9億円(遅延損害金1.1億円含む)に上り、1人当たり最大280万円となっていました。

原因は精勤手当や職責手当等、残業代の対象となる手当を含めずに計算していたことにあり、12月15日掲載の東洋経済ONLINEの記事によれば、「2001年に計算式を変えた際、式に基づいて計算が正しく行われるかという確認はしていた。しかし、人事や労務管理のプロである社会保険労務士によって計算式そのものが正しいか確認された記録はなく、今までミスが放置されていた」ということです。

◆未払い残業代放置は経営を直撃するダメージになり得ます

この問題により、同社は厳しい批判を浴びせられました。批判は、未払いの発生のみならず、労働基準監督署の是正勧告等を受けていたにもかかわらず長年放置していた姿勢にも向けられました。こうした批判は、今後の人材募集にも深刻な影響を与えかねません。

◆今年4月以降、未払い残業代リスクはさらなる脅威に

昨年12月27日、厚生労働省は、賃金等支払いを請求する権利の時効を現行の2年から原則5年へと延長する方針を固め、4月1日以降、労働基準法が改正される見通しとなりました。

改正法施行後も、当面の間は3年とされる見通しですが、5年経過後に見直し、以降は原則どおり5年とすべきという意見も出されています。

つまり、未払い残業代が発覚した場合でも、これまでは2年分の不足分を支払えばよかったのですが、2倍以上の金額を支払わなければならないこととなります。

◆残業代が適正に支払われているかチェックを受けましょう

4月1日以降は、時間外労働時間の上限規制も全面施行となるため、残業時間のカウントと残業代の支払いに注意を払う必要があります。

ソフトやクラウドサービスを利用しているから大丈夫と思っても、セブン‐イレブン・ジャパンのように計算方式が誤っていて、未払い残業代が発生し続けるといったこともあり得ます。二の舞を踏んで危機に陥らないためにも、一度チェックを受けてみてはいかがでしょうか?

「平成30年若年者雇用実態調査」にみる若者の転職意識

厚生労働省から「平成30年若年者雇用実態調査」が公表されました。5人以上の常用労働者を雇用する事業所約1万7,000カ所と、そこで働く若年労働者(15~34 歳の労働者)約3万人を対象として平成30 年10 月1日現在の状況について調査を実施したものです(前回は平成25 年)。

「定年前に転職したい」と考える正社員の割合は、前回の平成25年調査と比べて1.9ポイント増え、27.6%でした。賃金や労働時間などの待遇面でより良い条件を求め、転職を考える若者が増えたことが分かりました。詳しくは、以下のとおりです。

◆若年正社員の転職希望

若年正社員が現在の会社から定年前に「転職したいと思っている」割合は27.6%、「転職したいと思っていない」割合は33.2%となっています。

これを性別にみると、男性では定年前に「転職したいと思っている」が24.7%、「転職したいと思っていない」が35.1%、女性では定年前に「転職したいと思っている」が31.3%、「転職したいと思っていない」が30.6%となっています。

年齢階級別にみると、定年前に「転職したいと思っている」は「20~24 歳」層が32.8%と他の年齢階級と比べて高くなっています。

◆希望する転職年齢

定年前に転職したいと思っている若年正社員のうち、希望する転職年齢階級をみると、男性では「30 ~39 歳」が42.7%と最も高く、女性では「29 歳以下」が44.0%と最も高くなっています。

◆若年正社員の転職希望理由

現在の会社から定年前に転職したいと思っている若年正社員について、転職しようと思う理由(複数回答)をみると、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」が56.4%、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」が46.1%と高くなっています。

◆正社員以外の在学していない若年労働者の今後の働き方の希望

正社員以外の在学していない若年労働者の今後の働き方の希望をみると、「正社員として働きたい」が41.8%、「正社員以外の労働者として働きたい」が30.9%、「独立して事業を始めたい」が4.7%となっています。

性別でみると、男性では「正社員として働きたい」が49.3%、「正社員以外の労働者として働きたい」が14.9%、女性では「正社員として働きたい」が38.2%、「正社員以外の労働者として働きたい」が38.3%となっています。

③利用者急増!❝退職代行❞サービス

◆“退職代行”とは

 近年、退職代行サービスの利用者が増加しています。退職代行サービスとは、直接退職の意思を伝えることが難しい従業員に代わり、退職意思の伝達や、処理を行うものです。利用者は退職する企業と一切やり取りをすることなく、自分で辞めるよりもスムーズに退職できると謳う業者が多いのが特徴です。

 一方、弁護士のいない代行会社も多く、その場合は利用者の意思・希望の伝達以上のことはできません。退職にまつわる交渉等をするには、企業は従業員本人と連絡をとらなければなりません。費用は3~5万円が多く、弁護士に依頼するよりも当初の費用は抑えられますが、代行する行為にも制限があるのが特徴です。

◆背景にある問題

利用者が増加する背景には、さまざまな問題があります。退職代行サービスを利用する理由として多いのは、次のようなものです。

  1. 退職の意思を伝えたが、人手不足や上司の多忙等を理由に受け入れてもらえない
  2. パワハラがあり、相手の態度・言動が怖くて退職を言い出せない
  3. 執拗な引留め交渉に時間を取られたくない

従業員本人としては退職の意思が固まっているにもかかわらず、企業側がそれを受け入れないという状況が読み取れます。「自分の意思が尊重されないのでは」という思いが利用者側にあるようです。

◆企業の対応

 従業員が退職代行サービスを利用すると、ある日突然、代行会社から企業に連絡がきます。書面や電話等により、「当該従業員は本日より出社できない、有給を消化したうえで退職したい、以降の連絡は退職代行会社へしてほしい」という旨を伝えられることが多いようです。突然出社しなくなるため、退職の理由を従業員本人から聞く機会もなければ、業務の引継ぎも難しい場合がほとんどです。

 原則として退職は自由です。それが従業員本人の意思であれば、企業は退職を受け入れ、必要な手続きを速やかに行うのが一般的です(交渉すべき事項がある場合は除く)。

 問題がこじれるのを防ぐためにも、従業員が退職代行サービスを利用しなくてもよいと思える環境を企業が整備することが求められます。

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