戸崎事務所便り令和2年11月号

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今月の言葉

「人生の明暗を分かつものは、運不運ではなく心の持ちようだ」

京セラ創業者 稲盛和夫

今月号の記事から

  • 約9割の企業で採用活動にウェブを活用~経団連調査
  • 「副業」実態調査~「エン転職」ユーザーアンケートより~
  • 準備は進めていますか?来年1月1日より子の看護休暇・介護休暇の時間取得ができるようになります

①約9割の企業で採用活動にウェブを活用~経団連調査

経団連が先月15日、会員企業に対して実施した「2021年度入社対象新卒採用活動に関するアンケート結果ーコロナ禍における採用活動の状況と今後の見込みー」を公表しました。調査対象は全会員企業1,448社で、このうち442社から回答があったものを集計したものです。

◆大手では2020年度も多くの企業で採用活動を実施

 2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業で業績の不透明感が増していますが、20年度新卒採用活動の実施状況は「実施した・実施予定」が95.9%で、ほとんどの企業が何らかの形で採用活動を行っていることがわかりました。

◆広報活動への新型コロナウイルスの影響

 広報活動への影響では、「企業清津冥界の中止」をした企業が90.1%、「合同企業説明会への参加取りやめ」をした企業が72.6%あったのに対し、「ウェブによる企業説明会等の実施」をした企業は88.4%にのぼりました。また、ウェブの活用により、遠方の学生がアプローチしやすいと考えている企業が多い一方、学生の企業理解や動機形成が進みにくいと考えている企業が多いこともわかりました。

◆選考活動への影響

 ウェブ面接を実施した企業は、92.9%で、63.8%の企業が「最終面接を含めすべての面接で実施」と答えており、「最終面接を除いて実施」が17.3%、「1次面接のみ実施」は7.1%にとどまりました。またウェブ面接は対面と比べて評価が難しいとした企業は62.7%で、「対面と変わらない」と回答した企業は27.4%、「対面より評価しやすい」という回答はわずか0.7%でした。

 ウェブ面接のメリットとしては、「遠方でハンディのある学生に対して有効」(96.4%)、「交通費の支給などコストが減少」(81.4%)、「スケジュールの調整がしやすい」(74.0%)、デメリットとしては、「細やかな表情等が把握しにくい」(83.7%)、「通信環境を担保する必要がある」(75.8%)などの回答が多くみられました。

◆採用人数への影響

 採用計画の人数については、約8割の企業が「当初の計画どおり」と回答しましたが、採用計画の人数を減らした企業が2割弱ありました。人数を見直した理由については、新型コロナウイルスによる業績への影響」と回答した企業が7割超でした。

 大手企業の調査結果ではありますが、新型コロナウイルスの先が見通せないなか、ウェブを活用した採用活動は、中小企業でもいっそうすすんでいくとみられます。企業紹介映像の作成・公開やウェブ面接など、これまでは縁がないと考えられていた企業でも、真剣に取り組んでいく必要がありそうです。

【経団連「2021年度入社対象新卒採用活動に関するアンケート結果」】

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/080.pdf

 

②「副業」実態調査~「エン転職」ユーザーアンケートより~

 エン・ジャパン株式会社が運営する総合転職支援サービス『エン転職』(https://employment.en-japan.com/)上で、ユーザーを対象に実施した「副業」についてのアンケート結果が公表されました。

◆副業希望者

 「現在、副業を希望していますか?」と伺ったところ、49%が「希望している」(非常に希望している:24%、やや希望している:25%)と、昨年より8ポイントアップしました。「現在お勤めの会社では、副業は認められていますか?」と伺うと、27%が「認められています」と回答。約半数が副業を希望する一方、容認していない企業が多いことがうかがえます。

◆副業の希望理由

 副業希望者に、希望する理由を伺ったところ、昨年の本調査と同様に「収入を増やしたい」(88%)が最多でした。「失業したときの保険」は22%と、昨年より8ポイント増加。新型コロナウイルス感染拡大以降、将来の仕事に不安を抱く方が多いことがうかだえます。

◆副業の経験

 副業経験の有無を伺ったところ、34%が「経験がある」(現在している:12%、過去に経験がある:22%)と回答しました。昨年と比較すると、2ポイントの上昇。副業経験のある方に経験してよかったことを伺うと、第1位は、「副収入が得られた」(82%)でした。副業に期待する収入増が実際に叶った方が多いことがわかりました。

 ほかにも、「人間関係が広がった」(30%)、「知見・視野が広がった」(30%)、という回答が目立ちました。中には、「コロナ禍で出勤ができず、知人に紹介してもらい在宅でできる副業を始めた」と、新型コロナウイルスの影響がうかがえる回答もあります。

◆副業で不安なこと

 副業の不安を伺ったところ、第1位は「手続きや税金の処理が面倒」(52%)でした。「20万円以上稼いだので確定申告が面倒くさかった」(28歳女性)、「本業ですら、怪我したりしたときに労災を巡ってトラブルになったから」(35歳女性)など、副業をするうえで必要な対応や制度理解を懸念に感じている人は多いようです。

 第2位は、「本業に支障が出そう」(37%)でした。「現在の会社では副業は難しそうなので、もしやるとしたら会社バレが怖いです」(31歳女性)、「今の会社では具体的に副業可能か記載がなく、また副業可能かどうか聞くことで、転職の気があるか悟られないか不安です」(27歳女性)など、本業の職場での印象や変わらず成果を出し続けられるか不安な方が多いことがわかりました。

 第3位は、「過重労働で体調を崩しそう」(36%)でした。「今の仕事で精一杯です。日曜日しか休みがないので副業は考えたこともありませんでした」(23歳女性)など、本業と副業のスケジュール調整、労働時間のバランスを不安視していることがうかがえます。

準備は」進めていますか?来年1月1日より子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得ができるようになります。

◆「子の看護休暇」の制度とは?

 育児介護休業法により、小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日)を限度として、子の看護休暇を取得することができます。

 なお、取得できる労働者として、日々雇い入れられる労働者が除かれるほか、一定の労働者を労使協定で対象外とすることができます。

◆「介護休暇」制度とは?

 育児介護休業法により、要介護状態にある来生家族の介護や世話をする労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5年(その介護、世話をする対象家族が2人以上の場合にあっては、10日)を限度として、介護休暇を所得することができます。

 所得することができる労働者の要件は、子の看護休暇と同じです。

◆何が変わる?

 子の看護休暇・介護休暇の取得単位は、1日又は半日単位(1日の所定労働時間の2分の1。労使協定によりこたおなる時間数を半日と定めた場合には、その半日)とされていますが、令和3年1月1日より、1時間単位での取得が可能となります。

 また、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者には、半日単位での取得をさせなくても良いこととされていますが、令和3年1月1日より、1時間単にでの取得ができることとなります。

◆何が必要?

 育児介護休業規程の見直しが必要となります。さらに、子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得は、原則嗣業時間もしくは就業時間に連続するかたちで取得させれば良いこととされていますが、厚生労働省では法を上回る措置として、いわゆる「中抜け」を認める制度とすることを求めています。規程の見直しにあたっては、中抜けを認めることとするかどうかの検討が必要です。

 また、時間単位取得が困難な業務がある場合は、労使協定により、その業務に従事する労働者を対象労働者から除外することができるため、該当する業務がある場合は、労使協定の締結も必要となります。

戸崎事務所便り令和2年11月号