戸崎事務所便り令和元年12月号
今月の言葉
「道具を大切にする人は将棋も上達する」
将棋永世名人 大山康晴
~今月号の記事から~ 1.若手が求めるやりがいとパワハラ防止へのコミュニケーションの重要性 2.社会人インターシップをどう活用するか 3.有給取得率の調査結果と今後
①若手が求めるやりがいとパワハラ防止へのコミュニケーションの重要性
◆若手のやりがい、求められるコミュニケーション
マンパワーグループが行った、入社2年目までの若手正社員(22~27歳)を対象とした調査によると、仕事に「やりがいを感じている」割合は約70%だということです。やりがいの中身(複数回答可)では、上位から順に「仕事の成果を認められる」が37.6%、「仕事をやり遂げる」が34.7%、「自分の成長を感じる」が34.7%、「新しい仕事にチャレンジする」が33.2%、「お礼や感謝の言葉をもらう」が31.4%となっています。
また、若手正社員が取り入れてほしいと考える勤務制度への回答では、多いほうから順に「フレックス制」36.8%、「在宅勤務」33.3%、「モバイルワーク」30.8%が目立つ一方、「ない」との回答も37.5%ありました。
上記の結果を「コミュニケーション」という視点から見ると、認められたい・コミュニケーションをとりたいという希望がある一方、勤務制度についてはコミュニケーションがとりづらい方法の希望があるようです。
◆コミュニケーションとパワハラ
パワハラの防止対策を企業に義務付けるパワハラ防止法の施行を来年6月(中小企業は2022年4月)に控え、現在、パワハラ防止ガイドランの素案が公表されており、年内には正式に決定・公表される見込みです。
パワハラ予防のためには、職場のリーダーは部下を指揮する一方、部下から必要な情報が上がってくるようにして適切なコントロール(指揮・統制)をしなければなりません。昔のようにリーダーからの一方的な指揮・統制では仕事は回らなくなっています。
つまり、部下の話を聞いてあげて、部下のほうからのコミュニケーションを増やすよう、意思疎通を良くしなければならないのです。例えば、業務時間中に部下の話を聞く機会を増やしたり、部下が考えて意見を言えるように質問型マネジメントをしたりする等が必要です。
実際、上記調査でもコミュニケーションがとりやすい社内ツールとして、メール(55.3%)、電話(50.0%)に次いで「対面」(48.0)%も回答が多くなっています。社内SNS等も発達してきていますが、やはり人間同士、電話・対面といったアナログなコミュニケーションも重要なのだと思われます。
◆中小企業もスケジュールは考えておく
パワハラ防止のカギはコミュニケーション、といってしまえば単純なようですが、管理職・一般社員への研修一つとってもポイントなる部分を押さえる必要がありますし、法施行日までにやることは他にもたくさんあります(就業規則改訂、相談窓口設置・担当者の決定、従業員アンケート…etc)。中小企業には多少猶予期間がありますが、今からスケジュールだけでも考えておく必要はあるでしょう。
②社会人インターシップをどう活用するか
◆活用する企業が増加
副業・兼業を認めたり、ギガワーカーやフリーランスで働く人を多用したり、企業の間でも柔軟な働き方を受け入れる動きが広がっています。そのような背景のもと、「社会人インターンシップ」を戦略的に活用する企業が増えています。
今回は、社会人インターンシップを企業としてどう考えるかをまとめます。
◆社会人インターンシップとは
インターンシップというと、学生向けをイメージされると思います。しかし最近では、既に本職を持っている方や、複数の職を持つ既卒の人材を対象にした社会人インターンシップを受け入れる企業が増えています。
社会人向けの場合は、給与を発生させることがほとんどです。勤務時間は、平日に本業を持っている人も多いため、平日の時間外や土日、テレワーク等で人材を募集しているケースもあります。期間も1日から数カ月、夏期(冬期)休暇中等、柔軟に設定しているケースが多いようです。職種も、企画、マーケティング、新事業立上げ、ディレクター、デザイナー、ライター等多岐にわたります。
◆企業の目的
企業側の目的としては、優秀な人材の確保や雇用のミスマッチ予防など、雇用調整的に活用する場合のほかに、イノベーションの創出や新事業の宣伝といった戦略的な使い方をする場合もあります。
◆働き手の目的
働き手にとってみても、本職の傍ら新キャリア形成をする準備、興味のある分野への職業体験、人脈拡大、刺激や収入の獲得といったメリットが多いのが特徴です。
◆社会人インターンシップの導入を考える場合
仕事は検索して探す時代です。インターンシップも多分に漏れず、専用の求人サイトが多数存在します。まずはそれらを研究することから始めてもよいでしょう。
そして、有期雇用や短時間雇用、アルバイトとどう違いを出すか、また、給与や各種届出規定等をどう設定するか、そして特に、求人・募集をどこでするか……。
自社に合わせた、戦略的なインターンシップ制度を活用するとよいでしょう。
③有給休暇の調査結果と今後
◆平成30年の年次有給休暇の取得率は52.4%
厚生労働省は平成31年「就労条件総合調査」の結果を公表しました。調査によれば、年間の年次有給休暇の平均取得率は52.4%で、前年に比べて1.3ポイント上昇しています。取得率を企業規模別にみると、「1,000人以上」が58.6%、「300~999人」が49.8%、「100~299人」が49.4%、「30~99人」が47.2%となっており、規模により最大10ポイント近くの差がみられました。
なお、本調査は平成30年の1年間の状況について調査を行ったものですので、本年4月に施行された改正労働基準法による年次有給休暇年5日取得義務化前についての調査になります。
◆企業規模が小さいほど休みが少ない
また、公表された調査によれば、週休制の形態別適用労働者割合をみると、「完全週休2日制」が適用されている労働者割合は57.0%とありますが、その割合は企業規模が小さくなるほど低くなっています。年間休日総数についても、1企業平均は108.9日、労働者1人平均114.7日となっていますが、いずれも大企業ほど多く、小規模企業ほど少なくなるという傾向は変わりません。
◆年次有給休暇年5日取得の義務化
本年4月から、働き方改革法に伴う年次有給休暇年5日取得義務化が適用されています。
有給休暇取得率の低さについては以前から問題となっていましたが、法律の規制がかかったことで、企業でも取得率向上に向けた取組みが本格的に実施されているところでしょう。来年の調査結果には注目したいところです。
◆企業の現況を踏まえた取組みを
上記の調査結果の通り、中小企業ではもともと休みが少ないという実態があります。それにはそれなりの理由があるのでしょう。現在、働き方改革による大企業の残業時間削減のしわ寄せが中小企業に及んでいるという問題も指摘されており、厚生労働省も「しわ寄せ防止特設サイト」を設けて防止を呼び掛けています。そのため、特に中小企業にとっては、有給休暇取得義務化への対応は困難となることが予想されますが、根本的な問題への対応を検討しつつ企業としてしっかり取り組んでいきたいところです。
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